青ポの日
〜あぶさんはなぜ引退したか〜

◆JR五稜郭駅隣の複合施設「ビューティーコンシェルジュあおき」の青木幸子代表といろいろお話させていただく機会がある。
34歳で美容師の資格を取得、39歳で独立開業。技術の研鑽と努力の積み重ねの日々。
僕が聞いてきた青木代表の生き方の中で最も印象的だった話が、ご本人が美容師引退を決意した時のこと。
自身の年齢的・技術的なことを考慮し、周囲から見れば少し早いとも思われる時期に現場を離れ、若手に委ねた。
その後指導者としての活躍や経営の多角化など、イキイキと新しい道を歩き始めたところが、いかにもこの人らしい。

◆青木代表のこのエピソードを、ある経営者に話したことがある。
「なるほどねぇ。いい話を聞かせてくれてありがとう。」
この人もまた、将来に向けての若手の育成・技術の伝承、そしていつかやって来るであろう自身の引き際について考え始めるようになったという。

◆引き際-------辞書には「現在の地位や立場から退く時」とある。
ダグラス・マッカーサー元帥の「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」という言葉はあまりに有名。
我が国には“引き際の美学”という言葉がある。
サラリーマン生活もうすぐ26年の僕も、様々な人の様々な引き際を見てきた。
美しい引き際とは決して物事の終わりにとどまらず、身を引く自分自身はもとより、周囲に対しても新しい何かを生み出すものだと実感している。

◆企業や商店等の寿命には、一般的に人間の寿命ほどといわれているそうだが、それを超えて“老舗”と呼ばれるほどになる企業や商店にはきっと、理想的な引き際がある。
また、昨今は企業等において、経済環境の変化への対応や企業間のデジタルデバイスの問題など、時代の変化に沿った経営スタイルやシステム導入が求められているが、
従来継続してきたことを見直し、新たなスタイル確立してゆくことは容易ではない。そこにもまた、ビジネス上の引き際が必要とされるのではないだろうか。

◆ところでプロスポーツの世界では今年も何人もの名選手が引退した。
いつも思うことだが、アスリートの引き際は美しい。個人的には、長年愛読している野球漫画「あぶさん」の主人公・景浦安武選手の引退が残念。
あぶさんは実在する選手だと思っていた女性もいたというほど有名な主人公の62歳現役引退は、新聞でも報道された。
今年ヤフードームの最終戦、福岡ソフトバンクホークス対オリックスバッファローズ戦の代打サヨナラホームランで37年間の現役生活にピリオドを打ったあぶさんの今後を、僕はいまからとても楽しみにしている。

青いポスト    ライター/青山慎司 様